Application of FEP for Predicting the Binding Affinity of Macrocyclic JAK2 Inhibitor Analogues of Pacritinib
DOI: 10.1021/acsmedchemlett.5c00105 | Published: May 2025 | Category: Computational Chemistry | PDB: 8BPV
マクロ環JAK2阻害剤へのFEP適用:QMコンフォーマー+GAFF力場でPearson=0.84を達成。EC→3D-QSAR→FEPの3段階フィルタで合成候補を絞り込む実用的なCADDワークフローを実証。 #FEP #JAK2 #CADD
1. 背景と課題

Pacritinib(PDB: 8BPV)はJAK2を標的とするマクロ環阻害剤であり、骨髄線維症治療薬として承認されている。マクロ環構造は標的選択性とPK特性の改善に寄与する一方、計算化学的な扱いは依然として難しい。リング閉環によって全体のコンフォーマー自由度は制限されるが、局所的な結合回転(B環の二面角など)は柔軟であり、FEPの初期構造選択を誤ると相対結合自由エネルギーの予測誤差が一気に拡大する。

本研究は19種のpacritinibアナログに対して、合成優先順位付けを目的とした多段階の計算フィルタリングを構築し、特にFEPにおける「コンフォーマー × 力場」の選択指針を確立することを目指した。

ギャップ: マクロ環へのFEP適用例は文献的に少なく、コンフォーマー多様性と力場(OpenFF vs GAFF)が予測精度に与える影響を系統的に評価したベンチマークが不足していた。
2. 手法の概要
3段階フィルタリング [1] EC score (Flare V10) EC<0.29 を排除 / 低活性 75% 検出 [2] 3D-field QSAR train 49 / test 20 / r²=0.52 [3] FEP (cyclic map) QM conformers + GAFF 合成候補ランキング

QMで4種の低エネルギーコンフォーマーを生成し、cyclic perturbation map上でOpenFF と GAFF を比較。10 ns MDで二面角ダイナミクスも検証した。

3. 本研究で示したこと
  • マクロ環FEPは QMコンフォーマー × GAFF の組み合わせで実用精度に到達(Pearson=0.84)
  • 3段階フィルタ(EC → 3D-QSAR → FEP)で合成優先順位付けが成立
  • 化合物23(pIC50=8.2)の最低エネルギー配座23Dは23Aより8.1 kcal/mol安定で最良予測
  • 10 ns MDによりA–B環間の「レバー効果」を実証
  • 電荷変化を含む摂動(O→NMe)はFEP精度が顕著に低下する境界条件を明示
4a. FEP相関 (GAFF vs OpenFF)
Pearson r / Kendall's τ 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0.84 0.62 0.55 0.33 Pearson r (20 cmpds) Kendall τ (20 cmpds) GAFF OpenFF
τ=0.55 / r=0.84
GAFF + QM conformer (final)
4b. 検証プロトコル

EC スコア: Flare V10で全アナログをスクリーニングし EC<0.29 を低活性として排除。低活性化合物の 75% を正確に分類した。

3D-field QSAR: 訓練 49 件 / テスト 20 件で構築し、テストセットで r²=0.52。pIC50粗予測として機能。

FEP: cyclic perturbation map をJAK2タンパク (PDB 8BPV) 上に構築。OpenFF と GAFF を比較した結果、マクロ環の高活性化合物では GAFF が圧勝。

20化合物の大部分で予測誤差が ±0.5 log 単位以内に収束した。

4c. 化合物23の配座エネルギー
QM相対E (kcal/mol) と AB二面角 0 2 4 6 8 8.1 23A 18° 4.7 23B 26° 3.1 23C 24° 0.0 23D* 33° * lowest E + best FEP (Δ−0.1 log)
4d. 限界点・残る課題
  • 電荷変化を含む摂動(環状O→環状NMe)でFEP精度が低下
  • 最高活性化合物23でも残差 −0.1 log 単位
  • Flare V10 は商用—オープン環境での再現には独自実装が必要
  • GCNCMC(grand canonical NCMC)の組み込みは本ケースで改善せず
  • マクロ環特有のサンプリング難度はQMコンフォーマー多様化でも完全には吸収不可
5. テイクホームメッセージ
マクロ環は「コンフォーマー × 力場」が命
QM由来の多様な低エネルギー配座を初期入力として与え、GAFFで統一すると実用精度(r=0.84)が出る。
3段階フィルタは合成優先順位付けに有効
EC(安価)→ 3D-QSAR(中庸)→ FEP(高コスト)と段階的に精度・コストを上げる戦略が確立。
レバー効果を意識した置換設計
5-メチルピリミジン置換のような小さな修飾でAB二面角が変化し、結合姿勢全体に伝播する。
電荷変化と環内ヘテロ原子変換は鬼門
O→NMe型の摂動は別経路(吸収子・absolute FEP)の検討が必要。
ケムインフォマティクス応用
モジュール応用ユースケース
lib/fepDockFEPにマクロ環専用 cyclic perturbation map とQMコンフォーマー前処理を追加
lib/fepOpenMM + GAFF 実装でFlare V10ワークフローを再現(r=0.84目標)
lib/molgenEC スコア(<0.29)を MolgenYaml の早期フィルタとして実装
lib/mdRMSDAnalyzer に「lever二面角」自動検出機能を追加(10 ns MD)
本研究のインパクト
  • マクロ環FEPの「コンフォーマー多様性 × 力場」ベンチマークを公開し、CADDコミュニティに実用指針を提供
  • EC → 3D-QSAR → FEP の3段階フィルタが、合成コスト削減に直結する設計プロトコルとして提案された
  • JAK2阻害剤に限らず、マクロ環キナーゼ阻害剤・PROTAC(リガンド側)など マクロ環全般 への波及が期待される