Discovery of Novel and Potent Prolyl Hydroxylase Domain (PHD) Inhibitors for the Treatment of Anemia
J. Med. Chem. | January 2024 | DOI: 10.1021/acs.jmedchem.3c01932
生成AI+SBDDで非カルボン酸型PHD阻害薬を発見。R383/Y303を押しのける誘導適合ポケットを X 線で実証し、ADME と CKD 貧血ラットモデル有効性を両立させた化合物 15 を獲得。
(1) 背景と課題:カルボン酸基依存スキャフォールドの限界

HIF-α は正常酸素下で PHD1/2/3 によりプロリン水酸化され、VHL を介したプロテアソーム分解に送られる。PHD 阻害は HIF-α を安定化し EPO 産生を促すため、CKD 関連貧血の経口治療標的として有望である。承認薬ロキサデュスタット・バダデュスタット・ダプロデュスタットはいずれも α-ケトグルタレート(α-KG)模倣のカルボン酸基で活性中心の R383・Y303 と塩橋・水素結合を作る競合型阻害剤である。

カルボン酸基は高 PSA・低 logD を招き、細胞透過性低下と能動輸送体(OATP/MRP)介在の DDI リスクを生む。
α-KG 競合型は他の 2-OG 依存酵素(FIH・KDM・ALKBH 等)への選択性確保が難しい。

→ 非カルボン酸骨格で R383/Y303 と全く違う結合様式を取る PHD 阻害剤を、生成 AI で探索する。

(2) 手法:SBDD × Chemistry42 生成 AI
非カルボン酸 PHD 阻害剤探索フロー PHD2 構造 SBDD 仮想 VS 非カルボン酸 ヒット骨格同定 Chemistry42 生成 AI 最適化 化合物 15 PK/ADME 最適化 X 線共結晶構造 (compound 15 / PHD2) → R383・Y303 が外側にスイング → 拡張 inner sub-pocket が誘導適合形成 前臨床評価 ・PHD1/2/3 IC50 = nM 級 全アイソザイム阻害 ・Caco-2 透過性・代謝安定性 改善 ・5/6 腎摘ラット 10 mg/kg PO QD で Hb 回復
(3) 本研究で示したこと
  • 非カルボン酸骨格でも PHD1/2/3 全てを nM 級で阻害できる
  • R383/Y303 を押しのける誘導適合結合を X 線で初めて実証
  • α-KG 競合型と異なる新規結合様式(拡張 inner sub-pocket)
  • カルボキシレート除去で logD・透過性・溶解性が同時改善
  • 5/6 腎摘ラット貧血モデルで Hb の有意な回復(経口 10 mg/kg QD)
(a) PHD1/2/3 アイソザイム IC50 プロファイル
化合物 15 vs 承認 PHD 阻害薬 (IC50, nM, log) 1 10 100 1k IC50 (nM) PHD1 PHD2 PHD3 化合物 15 Roxa Dapro Vada

化合物 15 は PHD1/2/3 全アイソザイムに対し一桁 nM〜十数 nM の汎阻害活性を示し、承認薬と同等以上のオンターゲット効力を達成。

(b) X 線で見た誘導適合結合様式 (R383/Y303 押しのけ)
α-KG 競合型 vs 化合物 15(活性部位上面図) α-KG 競合型 (ロキサデュスタット型) R383 Y303 COO- 塩橋・H結合で固定 化合物 15(誘導適合) 非カルボン酸 / 拡張ポケット R383 Y303 化合物 15 (no COOH) R383・Y303 が外側へスイング
(c) ADME プロファイルの改善
レーダー:化合物 15 vs カルボン酸系参照 透過性 Caco-2 代謝安定性 溶解性 CYP 安全性 低 PSA cLogD バランス 化合物 15 COOH 系参照

カルボン酸除去により PSA 低下・logD 適正化が達成され、Caco-2 透過性と代謝安定性が同時に向上。CYP 阻害も問題なし。

(d) 5/6 腎摘ラット貧血モデルでの Hb 回復
経口 10 mg/kg QD・Hb 経時推移 (g/dL) 8 11 14 16 D0 D7 D14 D21 D28 Sham 5/6Nx vehicle 化合物15 10 mg/kg PO QD

投与 4 週で Hb は約 9 → 13 g/dL(Sham 同等水準)まで回復。経口投与で in vivo 有効性を実証。

(5) テイクホームメッセージ
非カルボン酸スキャフォールドが PHD で実用解になる

α-KG 模倣のカルボン酸基に依存せず、誘導適合で nM 級活性を実現できることを X 線・酵素アッセイで実証。

生成 AI は「結合モードを変える」探索に強い

Chemistry42 ベースの生成最適化が、SBDD 単体では届きにくい R383/Y303 押しのけ型骨格の発見を加速した。

COOH 除去 = ADME 実利

PSA 低下・logD 適正化により Caco-2 透過性・代謝安定性が改善。能動輸送 DDI リスクも低減できる。

5/6 Nx ラットで経口 PO QD 有効

10 mg/kg/day で Hb を Sham 同等まで回復。前臨床 PoC を経て化合物 15 が候補化合物として確立。

計算化学加速提案(lib/docking, lib/molgen)
  • Induced-fit ドッキング高速化:lib/docking に R383/Y303 の側鎖回転自由度を許す flexible-residue モードを実装し、α-KG 非競合型ヒットの拾い漏れを防ぐ。
  • 非カルボン酸フィルター:lib/molgen の MolgenYaml スコアラーに「COOH 不在 + nM 級ドッキングスコア」のスカラー報酬を追加し、PHD 系 induced-fit pose との一致度を強化学習報酬とする。
  • ADME 連動スコア:cLogD・PSA・Caco-2 予測モデルを UniDockRunner の後段フィルターに連結し、COOH 系と非 COOH 系で透過性差を可視化する。
インパクト
  • α-KG 依存酵素群(KDM・FIH・ALKBH)への非競合阻害剤設計の新しいテンプレートとなる
  • カルボン酸基依存からの脱却が ADME 上の実利をもたらすことを臨床候補レベルで実証
  • 生成 AI による「結合モードシフト」探索の創薬応用例として産業的にも重要