Conformer Generation Workflows for COSMO-RS Calculations: Are They All the Same?
Gomes, Granjo & Costa — J. Chem. Inf. Model. (2026) | DOI: 10.1021/acs.jcim.6c00606 | BioISI & Hovione
結論:926データ点の大規模ベンチでコンフォマー生成4手法を比較。全体平均はほぼ横並び(MAE≈0.9 log)、最速のRDKit単一コンフォマーが意外にも最良。柔軟・H結合分子では溶媒対応探索が効く。
① 背景と課題

COSMO-RS は QM 由来の分子表面分極電荷密度(σ-profile)から医薬品の溶解度・溶媒和自由エネルギーを a priori 予測できる代表的手法。しかし予測精度は入力コンフォマーに強く依存し、特に分子内水素結合の有無が σ-profile を大きく変える。

従来研究はバニリン等の少数ケーススタディに限定。多様な化学空間を横断する系統的ベンチマークが存在しなかった
高スループットスクリーニングでは目視や手作業のコンフォマー選択は非現実的 → どの生成手法を選ぶべきか実用指針が必要

→ 185分子・36溶媒・926溶解度データ点と405 ΔGsolv値で、複雑さの異なる4ワークフローを同一openCOSMO-RS 24a条件下で初の大規模比較

② 比較した4ワークフロー
RDKit-Direct(null)
ETKDGv3 1コンフォマー + MMFF94
↓ 最速
RDKit-DFT
エンサンブル→6 kcal/mol窓→1.0 Å RMSDクラスタ→DFT

GOAT(GFN2-xTB探索→DFT)

openCOSMO-RS_c_p(多段DFT精密化)

全手法とも最低エネルギー単一コンフォマーを BP86/def2-TZVPD(気相+完全導体)に投入し σ-profile を計算。生成構造の手法間平均 cross-RMSD は ≈0.6 Å

③ 計算化学パイプラインへの応用
  • lib/molgen: ETKDG→エネルギー窓→RMSDクラスタ→最低E選択の標準コンフォマーパイプライン
  • lib/molgen: ALPB/CPCM 溶媒対応の最低Eコンフォマー探索+柔軟性ベース手法切替
  • lib/molgen: Boltzmann加重エンサンブル平均ユーティリティ
  • lib/md: RMSDAnalyzer に原子順序並べ替え付き heavy-atom cross-RMSD
実装ギャップ: 上記コンフォマー絞り込み・溶媒対応探索・エンサンブル平均・COSMO-RS連携が lib に未統合
④ 主な結果 (a) 全体MAE:4手法ほぼ横並び
1.0 log 0.90 RDKit-Direct 0.93 RDKit-DFT 0.94 GOAT 0.95 c_p 0 1.0 溶解度 MAE (log10 mg/mL, N=926)

構造は手法間で異なる(cross-RMSD≈0.6 Å)のに全体MAEは 0.90〜0.95 でほぼ同等。最速・最単純の RDKit-Direct がむしろ最良

④ 主な結果 (b) 低溶解度・高柔軟域で破綻
0.3 高溶解 N=252 0.8 >1 mg/mL N=807 0.9 全体 N=926 >2.0 <1 mg/mL N=120 溶解度域別の累積MAE

高溶解域はMAE0.3まで低下するが、低溶解(<1 mg/mL)でMAE>2に劣化しSpearman ρも0.5未満でランク予測不能。全手法共通の課題。

④ 主な結果 (c) 計算コストと使い分け

glyburide(回転結合8)での総計算時間と精度:

約5分
RDKit-Direct(最速・剛直分子で十分)
数時間
GOAT — 高柔軟域(≥5回転結合)で最良精度
数時間
openCOSMO-RS_c_p — 高コストだが glyburide では最悪

ΔGsolv(N=405)ではDFT最適化を含むGOAT/c_pがやや良い(MAE≈1.2 kcal/mol)。RMSDの大小は溶解度影響の良い指標ではない

⑤ テイクホームメッセージ
  • 全体平均ではコンフォマー生成法の選択は中程度の影響—剛直な創薬分子主体なら高速な RDKit-Direct で十分
  • ただし≥5回転結合かつ分子内H結合可能な分子では手法選択が決定的(GOATが有利)
  • 溶媒対応の単一コンフォマー探索がエンサンブル平均と同等改善を低コストで提供(cimetidine等でH結合出現→精度向上)
  • 全手法とも低溶解度・高過大評価が残課題。openCOSMO-RS 24aパラメータ自体に精度上限
限界: データセットは87%が回転結合5本未満の剛直分子に偏り、マクロサイクル・ペプチドには外挿不可。ALPBはcyclohexane/n-heptane非対応。