Doing More with Less: Accurate and Scalable Ligand Free Energy Calculations by Focusing on the Binding Site
J. Chem. Inf. Model. | 2026 | DOI: 10.1021/acs.jcim.5c02932
QligFEP v2.1.0:球面境界条件で~6,250原子に限定したFEPがFEP+/pmxと同精度を$1/perturbation以下で達成、GPU不要・CPU並列・OSS。
背景と課題:FEPの実用障壁

FEP(自由エネルギー摂動)はMDベースで結合自由エネルギーを高精度予測でき、リード最適化で標準的に用いられるが、運用障壁が大きい。

系サイズ:全系水和の標準セットアップでは5万〜10万原子が必要で、長時間MD・大量レプリカが要る。
計算資源:GPUで数百〜数千時間級。リード最適化サイクルに乗せにくい。
専門性:λウィンドウ・拘束・トポロジ設定に専門知識。商用FEP+はライセンスコスト、OSS系は大規模での効率に課題。

→ 結合サイト局所のみを正しく扱えれば「精度を保ったまま桁違いに軽量化」できるはず — これが本研究の動機。

手法の概要:QligFEP v2.1.0
  • 球面境界条件 (SBC):結合サイト重心を中心に半径~20Åの球形水ボックスへ計算系を局所化、外側は連続誘電体で近似
  • 系サイズ ~6,214 ± 159 原子(全系比 1/10〜1/15)
  • 自動拘束アルゴリズム:環変換・電荷変化・立体変換までDual topologyで自動セットアップ
  • CLI/GUI統合:ネットワーク構築・解析・レポート生成までワンストップ
  • CPU並列実行:標準クラスタで~2h/レプリカ(5レプリカ標準)
SBC パイプライン PDB + ligand pair 球面切り出し ~20 Å 自動拘束 +λ schedule CPU MD 5rep × 2h ΔΔG 出力 入力 → SBC抽出 → 自動拘束 → CPU MD → 自由エネルギー
本研究で示したこと
  • 16タンパク質標的・639リガンド変換でFEP+(OPLS3e)/pmx-Sage 2.0と同等精度を確認
  • 多くの標的でKendall τが同等、システマティックなバイアスがないことを統計検定で確認
  • TYK2・P38・PTP1bでQligFEPが高い順位相関
  • 系サイズを~6,250原子に固定し全系比1/10〜1/15
  • AWS spotで$1以下/perturbationの運用コスト
  • CLI/GUI・ベンチマーク・解析スクリプトをGitHubで完全公開
(a) 標的別 Kendall τ:3手法比較
標的別 Kendall τ(高いほど順位相関◎) 0.0 0.25 0.50 0.75 τ TYK2 P38 PTP1b BACE MCL1 QligFEP FEP+ pmx-Sage 2.0 MCL1は3手法とも難

TYK2/P38/PTP1bでQligFEPが同等以上、MCL1・TNKS2は3手法ともτ低下 → 系の本質的難しさを示唆。

(b) 系サイズ:~6,214原子(全系比 1/10〜1/15)
系の原子数比較(log scale) 10^3 10^4 10^5 原子数 ~6,214 QligFEP (SBC) ~75,000 pmx (全系) ~80,000 FEP+ (全系) → 系サイズ 1/10〜1/15、CPUで2h/レプリカ
(c) コストとスループット指標
< $1
AWS spot CPU での1 perturbation あたりコスト(QligFEP)
~6,214 ± 159
SBC で扱う原子数(leg 平均)
~2 h × 5 rep
標準CPUクラスタでのランタイム / レプリカ × 標準レプリカ数
639 / 16
ベンチマーク変換数 / タンパク質標的数
(d) MUE分布:標的依存 1〜3 kcal/mol
MUE 分布(kcal/mol)— QligFEP vs FEP+ 0 1 2 3 MUE 良好域 ≤1 許容域 ~2 QligFEP FEP+ MCL1(3手法とも難) 標的(16のうち主な12を表示、TYK2→MCL1)
テイクホームメッセージ
局所化が効く
結合サイト中心の球面で水を切り出してもFEP+と同等のKendall τ・MUEを保てる — 全系MDは多くのケースで「過剰」と本研究は明示。
CPU並列が現実解
5万〜10万原子を回すGPUクラスタが要らない。標準CPUで2h × 5レプリカ運用はSME・アカデミアで決定的に重要。
ライセンスフリーの選択肢
QligFEP v2.1.0はQベース・OSS。FEP+ライセンスやpmxの大規模ノウハウ無しでリード最適化に乗せられる。
残る課題:大変換/荷電/溶媒露出
ソフトコア未実装で大型R基変換が不安定、荷電リガンド・溶媒露出ポケットではSBCの長距離静電近似に注意。GPU版は開発中。
応用:lib/fep への統合シナリオ
  • 既存 DockFEP / MMGBSAEngine の補完として、SBCモードを QLigFEPRunner として追加
  • UniDockスクリーニングのトップ ~50〜200 化合物を $1/perturbation でリスコア
  • MMGBSAEngine と Kendall τ をA/B比較し、FEP投入価値を判定するhookを組む
  • AWS spot CPU プロファイルを Job runner に追加
インパクト
  • 商用FEP+なしで同等精度の自由エネルギー予測をワークフロー化
  • GPU不要・$1/perturbation級のコストで定常的なFEP運用が可能
  • 16標的・639変換の公開ベンチマーク+スクリプトが再現性の足場