ArtiDock: Accurate Machine Learning Approach to Protein-Ligand Docking for High-Throughput Virtual Screening
J. Chem. Inf. Model. | 2026 | DOI: 10.1021/acs.jcim.5c02777
ArtiDock — MLドッキングで従来Vina/Glideを29〜38%超え。非結合構造・イオン・水も扱え、Vina並み速度でBoltz-2級の精度を実現。
① 背景と課題

HTVS用ドッキングは長年クラシカル手法(AutoDock / Vina / Glide)に支配されてきたが、現代の創薬要求に対して三つの限界に直面している。誘起適合(induced-fit)を前提としない非結合(apo / cross-docking)構造に弱く、活性サイトの金属イオン(Zn²⁺, Mg²⁺ など)や構造水を陽に扱えず、過去20年で精度が頭打ちとなっている。

非結合タンパク質構造でのドッキング成功率がholoより数十%劣化
Boltz-2 等のコフォールディングAIは精度高いが、HTVS規模では計算コスト過大

→ クラシカル並みの速度で、コフォールディングAI並みの精度を持つMLドッキングを目指す。

② 手法の概要 — ArtiDock
  • PLINDER訓練: ポケット分類アノテーション付き大規模PLI DBを学習源に
  • ポケット特異的特徴: 周辺残基ID・表面形状・化学環境を入力
  • 3D座標直接回帰: リガンドのポーズを直接予測
  • イオン・構造水を陽に表現: Zn²⁺/Mg²⁺/保存水を入力に含めて学習
  • CPU推論: GPU不要、Vina同等スループット
ArtiDock 推論パイプライン apo/holo Pocket + ions/H2O Ligand SMILES / conformers PLINDER-trained ML pose predictor 3D pose RMSD < 2 Å @ Vina speed PLINDER (pocket-classified PLI) → induced-fit & cofactor-aware learning 明示的に扱う:金属イオン (Zn²⁺/Mg²⁺) ・活性サイト保存水
③ 本研究で示したこと
  • PLINDER系新ベンチで Vina/Glide を +29〜38% 上回る成功率
  • 非結合タンパク質構造でも安定動作
  • イオン・構造水を含む系で従来比優位
  • PoseX ブラインドで Boltz-2 等のコフォールディングAIに対し競争力
  • 計算速度は Vina と同等(GPU 不要)→ HTVS スケール可能
④ (a) PLINDERベンチ精度比較
RMSD < 2 Å 成功率(PLINDERベンチ) 100% 75% 50% 25% 0 ~38% AutoDock ~44% Vina ~47% Glide ~75% ArtiDock +29〜38pt

著者報告: クラシカル3手法に対しPLINDERベンチでRMSD<2Å成功率が +29〜38 ポイントの優位(数値は本文記述からの典型図示)。

④ (b) 非結合構造とコファクタ条件
困難条件別の相対成功率(vs Vina = 1.0) 2.0× 1.5× 1.0× 0.5× Vina baseline apo ~1.6× metal site ~1.7× struct. H2O ~1.5× Vina ArtiDock

非結合構造・金属イオン部位・構造水のいずれでもVinaを上回る。著者は「困難シナリオで特に優位」と報告(相対倍率は本文の優位記述からの可視化)。

④ (c) PoseX vs コフォールディングAI
手法PoseX 精度速度 (秒/cmpd)GPU
Vina~10不要
DiffDock中〜高~30必須
Boltz-2~60+必須
ArtiDock高(Boltz-2 級)~10不要

PoseXブラインド評価で、AIコフォールディング系(DiffDock / Boltz-2)と競争力ある精度を、Vina相当の速度で実現。HTVSの実用域で最も有利な精度-速度トレードオフ。

④ (d) HTVSスループットの実用性
10⁶ 化合物 HTVS 推定処理時間 10⁴ h 10³ h 10² h 10¹ h ~3k h Vina (CPU) ~8k h GPU DiffDock ~17k h GPU Boltz-2 ArtiDock ≈ Vina ※ 縦軸はlog(時間)。ArtiDockはVinaと同帯域で精度のみ向上。
  • GPU費用ゼロで大規模ライブラリへ適用可
  • 精度を犠牲にせずスループット維持
⑤ テイクホームメッセージ
速度と精度の両立
クラシカル並み速度でAIコフォールディング級精度を初めて実用域に。
困難系を陽に解く
apo構造・金属イオン・構造水という従来弱点を学習段階で取り込み。
PLINDERの威力
ポケット分類アノテーション付きDBがMLドッキングの新基盤に。
HTVSパイプ刷新
Vina代替として lib/docking 主軸を置換しうる第一候補。
応用補足 — lib/docking への組込み
  • UniDockRunner の代替バックエンドとして ArtiDockRunner を新設
  • 金属・構造水トポロジを保持するパス(PDB→pocket grid)を ProLIF 連携
  • HTVS パイプライン: SMILES → Vina で粗ふるい → ArtiDock で精ポーズ
  • PLINDER ベンチを CI に組み込み、回帰検出
インパクト
  • HTVS の精度天井を + 29〜38pt 押し上げ
  • GPU 不要で社内クラスタに即時導入可能
  • 金属酵素・水媒介結合の創薬標的で特に効く
学習分布外(希少ファミリー)の汎化は要検証
ソース/商用ライセンスの公開状況は要確認