Novel GPU Engines for Virtual Screening of Giga-Sized Libraries Identify Inhibitors of Challenging Targets
J. Chem. Inf. Model. | 2025年9月 | DOI: 10.1021/acs.jcim.5c01335
GPU専用ドッキングRIDGEで100 cpds/s、APF型LBVSのRIDEで500K conf/s。両手法の連携でPD-L1とK-Ras G12Dから単桁μM以下の実験ヒットを獲得。
① 背景と課題

Enamine REAL や Synthesia 等のメイク・オン・デマンド試薬空間は数十億化合物の規模に達し、in silico SBVS/LBVS の探索領域は急速に「ギガスケール」へ突入した。一方で従来のドッキングは依然 CPU 並列化が主流で、計算スループットが律速となっている。

CPU並列ドッキング(Glide SP, DOCK, Vina など)はノード数を増やしてもクラウドコスト・電力面でギガスケール探索を継続することが現実的でない。
UniDock 等の既存 GPU 手法は SBVS 単独で、LBVS と統合したギガスケール・パイプラインが整備されていない。
PD-L1(PPI 標的)や K-Ras G12D(変異型 RAS)はリガンダビリティが低く、難標的として既存ドッキング手法のヒット率が伸び悩む。

→ ドッキング全工程を GPU 化し、SBVS と LBVS を同一基盤に統合、難標的でヒット獲得まで実証する。

② 手法の概要:RIDGE + RIDE
  • RIDGE (Rapid Docking GPU Engine):配座サンプリング・スコアリング・最適化の全段階を GPU カーネルへ移植。CPU-GPU 転送を最小化し 1 GPU で約 100 cpds/秒。
  • RIDE (Rapid Isostere Discovery Engine):参照リガンドの Atomic Property Field(静電・疎水・H-bond 供与/受容)を 3D グリッドで表現し、コンフォーマー集合との類似度を GPU で一括評価。
  • RIDE は 1 GPU で 500,000 conformer/秒。数十億化合物の LBVS が現実時間で成立。
  • SBVS(RIDGE)と LBVS(RIDE)のスコアを併用し、相補的なヒット候補リストを生成。
統合スクリーニング・パイプライン Giga lib. ~10^9 cpds RIDE (LBVS) APF, 500K conf/s RIDGE (SBVS) GPU dock, 100 cpds/s consensus rank 実験検証 SPR / ITC PD-L1 → 5件、K-Ras G12D → 3件のヒット(単桁〜サブμM)
③ 本研究で示したこと
  • RIDGE・RIDE の GPU 実装で ギガスケール VS が単一 GPU・日次オーダーで実行可能
  • DUD-E 102 標的の BEDROC 比較で Glide SP と 同等以上の選択性。
  • RIDGE/RIDE スコアは従来ドッキングスコアよりも実測 Kd/Ki との相関が良好。
  • PPI 標的 PD-L1 で 5 件、変異型 RAS K-Ras G12D で 3 件、計 8 件の実験ヒット。
  • 取得したヒットは 単桁〜サブ μMの親和性を示し、難標的で実用レベル。
④ 主な結果 (a) GPU スループット
処理速度(log10 cpds または conf/s) 1 10 10² 10³ 10⁴ 10⁵ 10⁶ CPU Vina 参考 ~1 cpds/s 級 ≈1 RIDGE GPU 100 cpds/s 100 RIDE GPU 5×10⁵ conf/s 500,000
④ 主な結果 (b) DUD-E 102 標的精度
BEDROC(α=80, 102 標的の概念分布) 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 DOCK 中央 ~0.30 Vina 中央 ~0.42 Glide SP 中央 ~0.50 RIDGE ≥ Glide SP RIDGE は Glide SP と同等以上の BEDROC を 102 標的で達成
④ 主な結果 (c) 難標的での実験ヒット
PD-L1 / K-Ras G12D の絞り込み Giga library ≈ 10⁹ cpds RIDE + RIDGE で in silico スクリーン 数十〜百件オーダーを購入・実験 8 hits PD-L1 (PPI) 5 hits, 単桁μM以下 K-Ras G12D 3 hits, sub-μM Kd SPR・ITC で結合確認、計 8 件の新規阻害剤
④ 主な結果 (d) スコア vs 親和性
スコア指標vs 実測 Kd/Ki備考
従来ドッキング (Vina/DOCK)弱相関順位入替多
Glide SP中程度計算コスト大
RIDGE score強相関難標的でも有効
RIDE APF 類似度強相関SBVSと相補
8 / 8
PD-L1 (5) + K-Ras G12D (3) で実験的に結合確認された化合物
スコア絶対値→Kd 換算は標的依存。著者は「ランキング能」改善を主張。
⑤ テイクホームメッセージ
Full-GPU ドッキング
配座生成・スコアリング・最適化を全段 GPU 化することで、CPU ドッキング比で約 2 桁のスループット改善を達成。
SBVS × LBVS 統合
RIDGE と RIDE を同一基盤に置き、構造ベース・形状/物性ベースの 2 軸でヒット候補を相補的に抽出する設計が効いている。
難標的でも実弾検証
ベンチマークだけでなく PPI(PD-L1)・変異 RAS(K-Ras G12D)という創薬難標的で 実験ヒット 8 件を取得し、実用性を示した。
APF を 10⁹ 規模へ
Atomic Property Field の3D類似度を GPU で 500K conf/s に押し上げ、リガンドベース検索もギガスケールに引き上げた。
応用補足:パイプラインへの取り込み
  • lib/docking/UniDockRunner の代替/比較バックエンドとして RIDGE 風のフル GPU カーネル化を検討。
  • lib/docking/ProLIFCalculator 後段に RIDE 風 APF 類似度フィルタを追加し、SBVS+LBVS のコンセンサスランクを実装。
  • lib/molgen の評価ループでギガスケール候補プールに対する高速 LBVS スクリーンとして RIDE を利用。
インパクト
  • ギガスケール VS をシングル GPU の日次運用へ。
  • 難標的(PPI / 変異 RAS)でも仮想スクリーニングが実弾級ヒットを生むことを実証。
  • SBVS と LBVS の GPU 統合という新たなベースライン基盤の提示。