FragGrow: A Web Server for Structure-Based Drug Design by Fragment Growing within Constraints
J. Chem. Inf. Model. | 2024 | DOI: 10.1021/acs.jcim.4c00154
制約付きフラグメント成長のWebサーバ。相互作用・MW・官能基制約と仮想合成3モードで合成可能なリード設計を3D空間で提案。
1. 背景と課題:FBDDにおけるフラグメント成長の制約設定の難しさ

フラグメントベース創薬(FBDD)では mM-uM の弱結合フラグメントヒットを起点に、結晶構造を頼りに置換基を「成長」させて nM 級の高活性化合物を設計する。しかし既存の自動成長ツール(BREED / LINKS / FBVS など)には、(1) 相互作用部位や物理化学特性を同時に拘束する柔軟な多次元制約 UI が乏しく、(2) 提案構造の合成可能性が考慮されないため実験者が手作業で取捨選択する負担が大きい、という運用上のギャップが残っていた。

既存ツール: 制約は「サイズ or 形状」など単一軸が中心、合成可能性の評価は事後 retrosynthesis 任せ。
大規模 3D フラグメント DB に対する制約付き検索はインデックス未整備で計算時間がボトルネック。

→ 多次元制約 + 仮想合成モード + 事前インデックス化を一体化した Web サーバとして FragGrow を構築する。

2. 手法の概要:3モード x 多次元制約
  • H置換モード:親リガンドの H 原子を選択し直接フラグメントで置換
  • サブ構造置換モード:環や側鎖などより大きな部分構造をまとめて置換
  • 仮想合成モード:アミドカップリング / Suzuki 型ハロゲン-ボロン酸カップリング等の既知反応で結合
  • 制約軸:相互作用部位(H結合・疎水)、MW・logP、官能基ホワイト/ブラックリスト、トポロジー
  • RDKit による 3D コンフォメーション生成・最適化+活性部位との衝突チェック
FragGrow パイプライン 親リガンド+受容体 3D Frag DB 事前インデックス 制約フィルタ 相互作用/MW/官能基 3モード結合 H置換/Sub置換/仮想合成 RDKit 3D最適化 + 衝突チェック 候補化合物 (3Dポーズ付)
3. 本研究で示したこと
  • Web サーバとして無償公開し、構造ベース FBDD のフラグメント成長を即時実行可能にした
  • 制約付き検索が大規模 3D DB に対し実用秒数で動作することを確認
  • MRTX1719(PRMT5)/ erdafitinib(FGFR)/ FAK 阻害薬の3つの FBDD 成功例で実最適化方向を再現
  • 仮想合成モードが提案構造の合成可能性を底上げ(実反応に紐付いた結合のみ生成)
  • RDKit ベースの 3D 最適化と活性部位衝突チェックで非現実的なポーズを排除
4(a) 既知FBDD成功例の再現
3つのFBDD実例での再現性 同一/類似 置換提案 Yes No MRTX1719 PRMT5 再現 erdafitinib FGFR 再現 FAK inh. FAK 再現 3/3 ケースで実最適化と同一・類似置換を提案
4(b) 成長3モードの守備範囲
モード x 適用シナリオ Mode 単純H置換 大規模置換 合成性重視 H置換 Sub置換 仮想合成 ●=主用途 / △=条件付き / ○=範囲外 仮想合成モードでサポートされる代表反応 アミドカップリング / Suzuki型 (ハロゲン-ボロン酸) → 数反応に限定 (網羅的ではない)
4(c) 多次元制約による絞り込み
フラグメント絞り込みファネル (概念図) 3D Frag DB 全件 MW / logP / 官能基制約 相互作用部位制約 3D 衝突チェック後 入力 採用
4(d) 公開ツールとしての位置付け
ツール多次元制約合成性3D索引
BREED限定的xx
LINKSサイズ中心x
FBVS形状重視x
FragGrow相互作用+MW+官能基仮想合成事前構築
公開URL
fraggrow.xundrug.cn
無償・登録不要のWebサーバとして公開
5. テイクホームメッセージ
制約は同時に効かせて意味がある
相互作用・物性・官能基を別々ではなく多次元同時に絞り込むからこそ、Web UI で実用的なヒット数に収束する。
合成可能性をフィルタとして組み込む
仮想合成モードはアミドカップリングや Suzuki 反応に紐付くフラグメント結合のみを許容し、メディシナルケミストの取捨選択コストを下げる。
3D ポーズ前提の SBDD ツール
親リガンド-受容体複合体の 3D 構造が前提条件。AlphaFold モデル等を入力にする場合は精度確認が必須。
3 つの実 FBDD 例で挙動を確認
MRTX1719 / erdafitinib / FAK 阻害薬の最適化方向を再現でき、retrospective には説得力のある検証となっている。
応用補足:lib/docking と lib/molgen への組込み
  • lib/molgen:MolgenYaml の制約スコアラとして「相互作用部位制約」「官能基ホワイトリスト」を移植
  • lib/docking:UniDockRunner 出力ポーズに対し、活性部位衝突チェックを後段フィルタとして再利用
  • lib/molgen:仮想合成モードを「反応テンプレ縛り生成」として JobManager のプリセット化
  • lib/docking:ProLIFCalculator の H結合パターンを FragGrow 制約 YAML に変換するアダプタ
インパクト
  • Web 公開により計算リソースを持たない実験家でも FBDD 成長を即試せる
  • 多次元制約 + 仮想合成の組合せが「計算で出した提案を合成へ流す」ワークフローを橋渡し
  • 3 つの上市/開発薬の最適化軌跡を再現できることが retrospective なベンチとして機能